新潟大学医歯学総合病院手術室の沿革
新潟大学医学部(病院)が創設されたのは1910年ですが、手術部が中央化されたのはその50年以上後の1962年7月でした。 それ以降現在までに4代にわたる手術室が大学病院での手術医療の中心の場所として活躍しております。ここではその沿革を紹介いたします。
●初代手術室(1962年~1966年)
☆中央手術部の発足(手術室の中央化)
手術部が中央化されるまでは各科が専用の手術室を持つパビリオン形式で運用されていましたが、1962年7月に中央棟3階に5室の手術室を持つ中央手術部が発足しました。手術部を使用した科は外科、整形外科、脳神経外科、産婦人科の4科であったと記録されています。
●2代目手術室(1966年~1985年)
☆新潟県の多くの優秀な外科医・麻酔科医を育て増加する手術件数を支えた手術室
第2代手術部は1985年まで活躍し、多くの優秀な外科医、麻酔科医を育て、多くの患者を救いました。1966年に耳鼻咽喉科と眼科が使用科に加わり、7科が使用するようになりました。1969年には輸血部が設置されました。手術件数は増加の一途をたどり、1984年には年間手術件数は4244件とピークを迎えました。この後、手術の高度化、手術時間の延長に伴い件数自体は徐々に減少していきました。
●3代目手術室(1986年~2009年)
☆手術医療の大きな変革期を経験した手術室(現西診療棟4階)
3代目手術部は江口昭治部長(第二外科教授)、吉田圭介副部長が中心となって尽力され作られました。斬新で科学的な考え方に基づいた近代的な工夫が凝らされており、当時としては東洋1の手術室といっても良い手術室となりました。構造は供給ホール型で、清浄度が極めて高く、清潔・不潔導線が完全に独立した供給に便利な10室からなる手術室でした。
3代目手術室が稼働した25年間は手術の高度化と先鋭化が急激に進み、手術件数も著明に増加しました。腹腔鏡下手術などの内視鏡下手術の発達、ナビゲーション手術や人工関節などのインプラント手術の増加、生体臓器移植手術の発達などがそれに当たります。これらに伴い医療機器も種類や数が増え複雑化したため、円滑に手術が遂行されるために臨床工学技士の常駐・増員が行われました。また、2003年11月には歯科が統合され医歯学総合病院となり、手術室が2室増加しました。さらに、2004年の独立行政法人化以降、大学病院も採算性を向上させる必要が生じました。2003年に医療保険請求の包括化が行われたため、出来高払いである手術の重要性が高まり、減少傾向にあった手術件数は一転急激に増加することとなりました。2009年には、手術数は年間6,000件に達しました。また、過密化する手術件数に対応するため手術管理も電子化されました。手術申込みの電子化、器械のコンテナ化等により手術件数の増加に対応するようになりました。
このように手術室に対するニーズの変化とIT化の必要性から、3代目手術室は手狭となっていきました。
●4代目手術室(2009年~現在):最新の手術手技に対応した近代的な手術室
これらの問題解決のため中央診療棟が新築竣工し、その2階と3階に分かれた手術室が完成しました。2009年9月に移転を行い、10月から本格稼働しました。2階に5つの手術室、メインの3階に10の手術室とクリーンサプライを配置した2階建て全15室の構造となっており、歯科手術も含めて年間約8,800件超の手術に対応しています。ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ)、4K/3D内視鏡手術など最新の医療機器を使用した手術に加え、待望のハイブリッド手術室が完成し、2020年4月から稼働を開始しております。手術申込みとスケジューリングは手術支援システムで管理されており、コンテナも自動供給となっています。麻酔記録と手術看護記録は電子カルテとして連携しています。また、オペラマスターを導入し、手術室稼働率、手術部職員の勤務状況などを多角的に検討し、効率化を図り経営改善を行っています。2014年からは薬剤師の常駐が開始されています。
新潟大学医歯学総合病院手術部 今井英一